残価設定ローンは“使い方次第で得にも損にもなる”。
短期で乗り換える人には最適だが、長期所有派は銀行ローンの方がトータルで安くなる。
- おすすめする人:3〜5年ごとに新車に乗り換える、走行距離が少ない、車を丁寧に扱う人。
- メリット:月々の負担軽減・下取り価格保証・乗り換えの容易さ。
- 注意点:走行距離制限・傷による減額・残価にも金利がかかるため総支払額が高い。
「ディーラーで残価設定ローンを勧められたけど、なんだか仕組みが複雑で不安…」
「月々の支払いが安くなるのは嬉しいけど、結局は損をしてしまうんじゃないか…」
ご家族のために新しいミニバンを検討中のあなたへ。残価設定ローン(残クレ)は、賢く使えば非常に強力な車の購入方法ですが、ライフスタイルに合わないと「こんなはずじゃなかった」と後悔することになりかねません。
この記事では、金融の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)が、残価設定ローンの仕組みからメリット・デメリット、そして損得の分岐点まで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたが残価設定ローンを選ぶべきか、それとも他の選択肢が最適なのか、明確な答えが見つかっているはずです。
🕒忙しい人のための1分まとめ
残価設定ローン(残クレ)は、車両価格から将来の下取り額(残価)を差し引いた金額を分割で払う仕組み。
月々の支払いを抑えつつ新車に乗れる反面、走行距離や傷に制限があり、総支払額は高くなる傾向。
「短期間で新車に乗り換えたい人」には最適だが、「長く乗る人」には不向き。
契約満了時の残価支払い・返却条件・走行距離制限を理解すれば後悔は防げる。

【結論】あなたはどっち?残価設定ローンが向いている人・いない人診断

まずは結論から。あなたが残価設定ローンに向いているかどうか、簡単なチェックリストで診断してみましょう。
【残価設定ローン診断チェックリスト】
□ 3年~5年ごとに最新の新車へ乗り換えたい
□ 頭金はあまり用意せず、月々の支払いをできるだけ抑えたい
□ 車の年間走行距離は1万km未満だ
□ 車を傷つけたり汚したりすることは少なく、丁寧に扱う自信がある
□ 車のカスタマイズにはあまり興味がない
□ 契約終了後、車を所有することにこだわりはない
3つ以上当てはまったあなたは、残価設定ローンのメリットを享受できる可能性が高いです。
一方で、当てはまる数が2つ以下だった方は、銀行ローンやカーリースなど、他の選択肢を検討した方が後悔しないかもしれません。その理由を、これから詳しく解説していきます。
そもそも残価設定ローンとは?仕組みを3分で解説

残価設定ローン(残価設定型クレジット)とは、ひと言でいうと「将来の車の価値(下取り価格)をあらかじめ決めておき、その価格を車両本体価格から差し引いた金額を分割で支払う」ローンです。
例えば、350万円の車を購入し、5年後の残価が100万円に設定されたとします。この場合、あなたは車両価格350万円から残価100万円を引いた250万円分を、5年間で分割して支払うことになります。これにより、車両価格の全額をローンで組む場合に比べて、月々の支払額を大幅に抑えることができるのです。
そして契約期間が満了した際には、以下の3つの選択肢からあなたのライフプランに合ったものを選ぶことになります。
- 新しい車に乗り換える: 乗っていた車をディーラーに返却し、それを頭金の一部として新しい車に乗り換える。
- 車を返却する: 乗っていた車をディーラーに返却して契約を終了する。
- 車を買い取る: あらかじめ設定された残価(この例では100万円)を支払って、その車を自分のものにする。(一括払いまたは再ローン)
この仕組みにより、常に新しい車に乗りたい方や、月々の負担を軽くしたい方にとって魅力的な選択肢となっています。
HUBRIDE小野寺契約前に「残価に金利がかかるか」「最終回支払の再ローン条件」を必ず確認しましょう。
ディーラーによっては残価再ローンの金利が5%を超えるケースもあります。
また、残価保証条件(走行距離・傷・修復歴)を明確にし、返却基準書類は必ず控えておきましょう。
メリット5選とデメリット5選|後悔しないための全知識

残価設定ローンには光と影があります。両方を正しく理解することが、後悔しないための第一歩です。
残価設定ローンの5つのメリットは以下の通りです。
①月々の支払いが安い/②最新車種に乗り換えやすい/③下取り価格が保証される/④頭金が少なくても契約可能/⑤維持費が安定する。
一方、5つのデメリットは、①総支払額が高くなる/②走行距離制限/③車の所有権が自分にない/④傷や汚れの減額査定/⑤途中解約が難しい。
この仕組みを理解したうえで、「何年で乗り換えるか」を明確にすれば後悔は防げます。
残価設定ローンの5つのメリット
残価設定ローンには、特に短期的な視点で見た場合に多くのメリットがあります。
- 月々の支払いを抑えられる: 最大のメリットです。残価分を差し引いてローンを組むため、通常のローンよりも月々の返済額が格段に安くなります。
- ワンランク上の車に乗れる: 月々の負担が軽くなることで、予算的に少し厳しいと思っていたグレードの高い車や、オプションが充実した車にも手が届きやすくなります。
- 将来の下取り価格が保証される: 中古車市場の価格は常に変動しますが、残価設定ローンなら契約時に設定した残価が保証されます。そのため、数年後に市場価格が暴落しても損をすることはありません。
- 乗り換えがしやすい: 契約満了時に車を返却し、スムーズに次の新車へ乗り換えることが可能です。面倒な売却手続きなども不要で、ライフステージの変化に合わせて車を選び直せます。
- 審査が比較的通りやすい: 銀行のマイカーローンに比べて、ディーラーが提供する残価設定ローンは審査基準が比較的緩やかである傾向があります。
残価設定ローンの5つのデメリット(後悔ポイント)
一方で、デメリットを理解せずに契約すると「やめとけばよかった」と後悔する原因になります。
- 総支払額が高くなる傾向がある: これが最大の注意点です。月々の支払いは安く見えますが、金利は据え置いた残価部分にもかかります。そのため、最終的に車を買い取る場合の総支払額は、低金利の銀行ローンより高くなることがほとんどです。
- 走行距離に制限がある: 残価を保証するため、年間の走行距離に上限(例: 年間1万2000kmなど)が設けられています。これを超過すると、1kmあたり5円~10円程度の追加料金が発生します。
- 車の傷やカスタマイズに制約がある: 返却時の価値を維持するため、車の内外装の傷やへこみ、汚れには厳しい基準が設けられています。規定外のカスタマイズも原則禁止です。
- 所有権が自分にない: ローン完済まで車の所有権はディーラーや信販会社にあります。そのため、契約期間中に自由に売却することはできません。
- 契約満天了時の選択肢が複雑: 契約終了時に車を買い取る場合、残価を一括で支払うか、金利が高くなる傾向のある再ローンを組む必要があります。まとまった出費や新たなローン負担が発生する可能性があります。
HUBRIDE小野寺残価設定ローンを“お得に使う”最大のコツは、「所有」より「利用」を意識すること。
3〜5年ごとに新車へ乗り換える人には最適ですが、7年以上乗る予定なら通常ローンが有利です。
また、残価精算や再ローンを視野に入れる場合は、契約時に「再ローン金利」「返却条件」「傷の査定基準」を必ず確認しましょう。
“乗る期間を決めてから契約する”ことで、支出の最適化と満足度向上が両立します。
- 残価設定ローンの最大の利点は「月々の支払額を大幅に抑えられること」。
- 反面、残価にも金利がかかるため「総支払額が増える」リスクを見落としがち。
- 利用者の満足度を分けるのは、“契約時の目的設定”の明確さにある。
【徹底比較】残価設定ローン vs 銀行ローン vs カーリース

では、具体的にどのくらい支払額が違うのでしょうか。あなたの状況に近い、32歳・家族持ちの鈴木さんがミニバン(ヴォクシー)を購入するケースでシミュレーションしてみましょう。
月々の支払額だけを見ると残価設定ローンが有利ですが、総支払額では銀行ローンが最も安くなります。
カーリースは維持費込みで手軽ですが所有権が持てません。
自動車を「所有したいか」「利用したいか」で選ぶと最適な選択が見つかります。
3つの購入方法の基本比較
まずは、それぞれの方法の基本的な違いをテーブルで確認します。
| 項目 | 残価設定ローン | 銀行ローン | カーリース |
|---|---|---|---|
| 所有権 | 完済までディーラー/信販会社 | 購入者 | リース会社 |
| 月々の支払額 | 比較的低い | 比較的高い | 維持費込みで定額 |
| 総支払額 | 高くなる傾向 | 最も低い傾向 | 契約内容による |
| 金利相場(年率) | 3.0%~6.0% | 1.5%~3.0% | 金利の概念なし |
| 利用上の制限 | 走行距離、カスタマイズ等 | 原則なし | 走行距離、カスタマイズ等 |
| 中途解約 | 途中解約は可能ですが、残債の一括返済に加え、違約金が発生する場合があり、経済的負担が大きくなる | 可能(一括返済) | 途中解約は可能ですが、残債の一括返済に加え、違約金が発生する場合があり、経済的負担が大きくなる。 |
| 維持費(税金等) | 別途支払い | 別途支払い | 月額料金に含まれる |
※2025年10月時点の一般的な金利相場を想定
【実例】ヴォクシー購入シミュレーション(5年契約)
【設定条件】
- 車種: トヨタ ヴォクシー S-Gグレード
- 車両本体価格: 3,440,000円
- 契約期間: 5年(60回払い)
- 頭金・ボーナス払い: なし
| 支払い方法 | 金利(想定) | 月々の支払額(目安) | 5年間の支払総額(※) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 残価設定ローン | 4.5% | 約42,000円 | 約2,520,000円 | 月々の支払いは最も安い。最終回に残価(約117万円)の支払いが必要。 |
| 銀行ローン | 2.0% | 約60,000円 | 約3,600,000円 | 総支払額は最も安い。完済すれば完全に自分の車になる。 |
| カーリース | – | 約55,000円 | 約3,300,000円 | 税金やメンテナンス費込みで家計管理が楽。所有はできない。 |
(※)残価設定ローンは5年後に返却する場合の金額。銀行ローン、カーリースは5年間の総支払額。
【シミュレーションからわかること】
この結果を見ると、月々の負担をとにかく軽くしたいなら残価設定ローンが魅力的です。しかし、5年後に車を自分のものにしたい場合、残価(約117万円)を支払うと総額は約369万円となり、銀行ローンを上回ります。
一方で、総支払額を最も安く抑え、車を自由に長く使いたいなら銀行ローンが最適です。月々の支払額は高くなりますが、最終的な資産価値を考えると最も合理的と言えます。
税金や車検の支払いを気にせず、全てコミコミで楽に乗りたいならカーリースが良い選択肢です。ただし、所有権はなく、契約満了時には返却が基本となります。
HUBRIDE小野寺ライフスタイルに合わせて判断しましょう。
・短期で乗り換えたい→残価設定ローン
・長期で資産として保有したい→銀行ローン
・税金や保険を含めて管理したくない→カーリース
各プランの金利・総額をシミュレーションで比較してから契約するのが鉄則です。
- 総支払額が最も安いのは銀行ローン。
- 月額費用が最も低いのは残価設定ローン。
- 手間・維持費込みの利便性ならカーリースが優勢。
【メーカー別】トヨタ・ホンダ・日産|残価設定ローンの金利・条件を比較

残価設定ローンは、メーカーによって金利や条件が異なります。ここでは主要メーカーのプランを比較してみましょう。(2025年10月時点の一般的な金利・条件の目安です。実際の条件はディーラーにご確認ください。)
| メーカー | プラン名 | 金利目安(通常時) |
|---|---|---|
| トヨタ | 残価設定型プラン | 3.9%~4.9% |
| ホンダ | Hondaの残クレ | 3.5%~4.3% |
| 日産 | 日産ビッグバリュークレジット | 3.9%~4.9% |
| マツダ | マツダスカイプラン | 1.99%~2.99% |
| スバル | 安心プロテクト3 | 3.9%~4.4% |
このように、メーカーごとに金利や付帯サービスに大きな違いがあります。特にマツダのように低金利を打ち出しているメーカーもあれば、日産やスバルのように保証やメンテナンスを手厚くすることで付加価値を高めているメーカーもあります。車を選ぶ際は、車の性能だけでなくローンの条件もしっかり比較検討することが重要です。
【実例】残クレ利用者の失敗談と回避策

「こんなはずじゃなかった…」という後悔をしないために、よくある失敗談とその回避策を解説します。
失敗談1:走行距離オーバーで10万円以上の追加料金が!
「仕事の外回りと週末の遠出で、気づけば年間2万kmも走っていました。5年後の返却時、走行距離超過分として10万円以上の請求書が届き、愕然としました…」(30代・営業職)
【FPの回避策】
契約前にご自身の年間走行距離をシビアに見積もることが最も重要です。スマートフォンの地図アプリの移動履歴などを参考に、過去1年間の走行距離を正確に把握しましょう。もし制限を超えそうな場合は、走行距離制限が長いプランを選ぶか、制限のない銀行ローンを検討すべきです。
失敗談2:子供がつけた傷で査定額が大幅ダウン…
「小さな子供がいるので気をつけてはいましたが、シートにジュースのシミをつけたり、ドアに細かな傷がついてしまいました。返却時の査定で『原状回復費用』として5万円を請求され、保証されるはずの残価から引かれてしまいました。」(30代・主婦)
【FPの回避策】
小さなお子様がいるご家庭や、アウトドアなどで車をアクティブに使う方は特に注意が必要です。契約時に傷や汚れに関する免責の基準を必ず確認しましょう。また、万が一に備えて、小さな傷もカバーできる車両保険に加入しておくことも有効なリスク対策となります。
残価設定ローンに関するQ&A(傷、事故、中古車など)
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最後に、残価設定ローンに関するよくある質問にお答えします。
- 契約中に事故を起こしたらどうなりますか?
-
修理が必要になります。車両保険を使ってきちんと修理すれば通常は問題ありませんが、「事故修復歴」がつくと返却時の査定額が保証されている残価を下回る可能性があります。その場合、差額分を請求されることがあるため、契約内容を必ず確認してください。
- 中古車でも残価設定ローンは使えますか?
-
はい、使えます。ディーラーが扱う認定中古車などで利用できるケースが増えています。ただし、新車に比べて残価率が低く、金利が高めに設定される傾向があるため、総支払額をよく比較検討する必要があります。
- 途中で解約はできますか?
-
原則として途中解約はできません。やむを得ない事情で解約する場合は、その時点での残りのローンを一括返済する必要があります。さらに、違約金が発生することもあるため、大きな金銭的負担がかかります。
- 傷の基準はどのくらい厳しいですか?
-
これは基準は信販会社によりますが、一般的に1cmを超える傷は減額対象となり、追加費用が発生する可能性があります。契約時に査定基準を必ず確認しましょう。
まとめ

残価設定ローンは、あなたのカーライフや価値観に合えば、月々の負担を抑えつつ新車に乗れる非常に便利な仕組みです。しかし、その裏にあるデメリットやリスクを理解しないまま契約すると、将来の大きな負担につながりかねません。
この記事のポイントをまとめます。
- 向いている人: 短期間(3~5年)で乗り換えたい、走行距離が少ない、月々の支払いを抑えたい人。
- 向いていない人: 同じ車に長く乗りたい、走行距離が多い、総支払額を安くしたい、車を自由にカスタムしたい人。
最終的な損得は、あなたのライフスタイル次第です。まずはご自身の車の使い方を客観的に見つめ直し、残価設定ローンだけでなく、銀行ローンやカーリースも含めた複数の選択肢で見積もりを取り、総支払額と条件を冷静に比較すること。それが、後悔しない賢い車選びの唯一の方法です。
![HUBRIDE[ハブライド]公式サイト](https://hubride.co.jp/wp-content/uploads/2025/04/cc3d9ca1-c88b-463e-af8f-67dd29cc5449.png)

